SEIKO LORD-MATIC Cal.5601A

 名称:56ロードマチック(56LMA)、キャリバーはCal.5601A。機械落径25.6mm(直径)で機械厚みは4.25mmです。部品総数81個(外装部品含まず:竜頭、ケース、風防、干支、針)、テンプ振動数は21600回転/時、手巻装置付自動巻中三針で規正装置付。微動緩急装置付、耐震装置と保油装置付です。基礎キャリバーはCal.5606Aなんですが、こちらは日・曜付にも関わらずCal.5601Aも機械の直径も厚みも同じなんですよ。

  

 裏蓋には文字が多く入っています。外周に円を描くように入っている文字の中にOPEN THRU GLASS32.とありますね。最後にある32を覚えておいてください。

  

 まずはベゼルの空け口を探して取り外します。この作業も徐々に外すのが無難かと思いますよ。これが取り外した状態です。サビが凄いなぁ。

  

 これはテンションリング付風防外しの工具です。今回のロードマチックにはコレを使用。

     

 写真(左)/このように風防を挟み込み手で締め付けます。ところで裏蓋の数字を覚えていますか。その32というコマを使用。一定のところで止めケースより外します。慣れない時に締めすぎて風防破損させたことがシバシバありましたわ、、、(^o^;;

 写真(右)/風防を外すとこんな感じになります。奇麗な干支ですわ。それにしてもサビがヒドイです。中の機械は大丈夫かな。ちょっと心配になってきました。機械を取り出す前に機械が干支方向に抜けてこないよう細工されてるリングが入っています。それをはずしてから、竜真を抜き機械との対面がかなうわけです。

    

 機械はマズマズといったところかな。あれぇ〜?3番車の上に受石が無いぞ〜?何処か機械内部に落ち込んでる可能性大です。それも探しながらの作業になりそうですね。それではここで外装のサビ落しと洗浄をしましょう〜。

   

 受石発見! ところが更に厄介なことになっています。破損し片割れが何処かに入ったままです。他の部品に伝染してないことを祈りながら作業しなくては、、、。

      

 ムーブ内の色々な部品です。幸いな事に受石の伝染もなく内装部品も異常なしでした。

     

 機械を止めているのはこんなネジです。右側にあるのは干支裏側地板機構のネジで、中央にあるネジが自動巻機構のもの。左側のネジが機械部のものです。この位置の上から2つ目のバネが秒針規正バネになります。

   

 輪列歯車とガンギ車を横から撮ってみました。左から二番車、三番車、四番車、ガンギ車です。画像の下に地板があると想定して、歯車の方向もあわせてみました、、、歯車の食い合いまでは表現出来ませんでしたが。(^o^;

   

 自動巻機構に使用している歯車類です。左より回転錘、1番仲介車、2番仲介車、切換伝え車、伝え車、角穴車、ゼンマイ。ゼンマイが巻き上げられる順序は、、、回転錘→(1番仲介車・2番仲介車)→切換伝え車→伝え車→角穴車→ゼンマイです。

   

 1番受けを利用して歯車を所定の位置に置いてみたところ。奥にあるのが回転錘(ローター)で、その手前が1番受です。切換伝え車は分りますよね。その下にあるのが左に2番仲介車で右が1番仲介車です。そして香箱の左にあるのが伝え車です。写真ではハッキリと分らないかもしれませんが、切換伝え車は2枚歯を持っており、1番受け側の歯には2番仲介車が噛み合い、反対側には1番仲介車が噛み合っています。さらに1番仲介車と2番仲介車、切換伝え車とは連結。それで左右に回転錘が回転しても一方はスリップしてる訳なんです。

   

 2番車から下の説明のマサツカナを取り外してみました。こんな感じになっています。リュウズを引き抜き、針を回転させる時と時刻を表す時に独自に回転しているのですが、リュウズにて針を回転させる時は切換車が直接、マサツカナにせり出して連結している訳です。たとえて言うなら線路のレールのポイント切換みたいな仕組みですかね。

   

 輪列の配置を見て頂くと分ると思いますが、2番車の位置が違うと思いませんか? このLMではセンターに4番車だけが納まっています。2番車にはもう一つの特長があります。それは文字盤側のセンターにあるツツカナの役目をしているものを備えていること。写真4枚手前の輪列をご覧ください。そこの左端が2番車なのですが、カナが2つあるのが分りますか? 上のカナは3番への伝達カナですが、下のカナはツツカナの機能をもっています。LMでの正式名はマサツカナと言いますが、ある一定の力がないと回転しないように設計。また秒針規正レバーは3番車の上にあるのですが、この先がテンワに触れて規正されるようになっています。

     

 1番受けの内部には輪列をはじめ自動巻の減速車などが入っているんですよ。

   

続けて角穴車も取り付けました。

   

 アンクルもアンクル受も取り付けましたが、一般的なアンクル周辺とは違うように思いませんか。このLMには地板から出ているドテピンなるモノがありませんよね。アンクルのハコの近くになにやら丸いモノが見えると思いますが、これがアンクル受のドテピンの中で左右に止められてているのです。

   

 テンプ受けも取り付け、1番仲介車も仲介車押さえで取り付けました。

   

これで受側の組立も終了です。

 地板側の組立をする前に少し説明をしておきましょう。センターのパイプは今までの中三針ですと2番車でしたよね。このLMでは地板に固定されたパイプとなります。そして2番車は巻芯先端部の左にある穴石のところです。

      

   

 日ノ裏車を組み込みました。普通の時計と変わらないように見えますが、この日ノ裏車は少し違っていまして、バネの力でマサツカナに噛み合わされています。筒カナも同様な形で噛み合わされているのです。筒カナは分針取り付け部品ですから遊びが大きくならないよう、このような処理をされているのでしょう。ちなみに同じLMをお持ちであればリュウズを引き抜き針を正方向に回転させて確認してみると分ると思いますよ。回転させた後、手をリュウズより離すと、分針が逆方向に戻されていることが確認できるはずです。

   

 2番穴石の右側にある歯車と、その下にある歯車とは1つの部品となっていて
切換車と言います。通常はこの位置にあるのですが、リュウズを引き出しますと2番車のマサツカナに連結され針を回すこととなります。まるで列車などのレールのポイントの切換のようですね。

   

 笠車まで取り付け、その上を日車押さえで取り付けました。しかし、日付もない時計なのに日車押さえって言うんでしょうか(^o^; 日付タイプと共通に作ってあります。コストダウンのためでしょうか?

   

干支も取り付け針も入れ、ケースの中に収めました。

   

 ここでテンションリング付風防外しの工具を使い、風防を入れる作業となります。この台の上に風防を載せ風防にこのようにかぶせて締め付けます。ある一定のところで締め付けるのを止め、外装ケース本体にかぶせます。そして風防とウラブタを手で押さえつけると簡単に入ります。

   

 全ての作業が完了。オリジナルのベルトが付いていたこともあり“謎の白い粉”で洗浄もして奇麗になりました。ただ残念なことに風防の在庫がなく交換できませんでした。

  

   
   
kuroさんの一言

 56ロードマチックに搭載された系統の機械は、同時代のKSやGSなどに幅広く使用されたました。現存する数が多いためにマニア間での人気は低いようですが、薄型設計で、自動巻機構と輪列を1番受け内に収め、見た目にも美しく仕上げられています。ただ日付け曜日付きの機種では早送りのための揺動レバーがスリップを起こしやすい部品であることと、その在庫がないことが理由で敬遠されているようですが、、、。メーカーさんに再度追加製作をお願いしたいものですなぁ〜(^o^;;

  

  

  

   

  

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