BULOVA ACCUTRON

  

  

  

  

  

 

  

  

1秒間に360振動

竜頭は裏蓋上にあります

 ブローバの音叉時計アキュトロンです。入手した当初、1日に1時間くらい誤差が発生していました。「音叉時計の修理は困難」と言われています。とりあえずブローバ社と提携し音叉時計の製造をしていたことのあるシチズンに問い合わせてみました。返事は「修理不可」。そこでネット上で有名な某時計ファンの方に相談してみました。「接触の問題など考えられるが、特殊部品が破損していると製造が中止された時計なので部品入手は絶望的」との返事。最後に懇意にしている時計店に時計をあずけることに。1ヶ月後、「修理完了」の連絡をもらいます。結局「入っていた電池の電圧が違っただけ」とのこと。時計店の店主も当初は原因が分からず、分解作業まで行ったそうです。ただしこの電池(水銀電池)についても入手が困難で、入れ替えた電池は他の時計店にあるストック品をわけてもらったとのこと。ちなみに電池アダプターなどを使って現行電池の電圧を変える方法などもあるようです。

 独特なローマ文字と音叉器具をイメージしたブローバ社のマークが目をひきます。音叉マークは現在もブローバ社のマークとして使われていますが、現在は音叉時計は作られていません。時計からは小さく「キ〜ン」という音叉の高音が聞こえます。2001.2 update

    

  

  

  

 電池を使った時計にも様々な種類があります。音叉時計のブローバ/アキュトロンは、ひときわ特殊な構造を持った電池式の時計。音楽の授業で習ったと思いますが、「音叉」とは向かい合ったU字型の2つの金属の一方に振動を与えると、もう片方が規則正しく共鳴(振動)するという原理。お寺の鐘(この場合U字を逆さにすると鐘の形になりますね)をつくと、鐘の内側で「グワングワングワン」と音が同じリズムで行ったり来たりする現象と同じです。この共鳴(振動)を時計の振動と運針動力に応用しているのです。

 振動を取り出して300個ものツメ(歯)を持った車に伝えて時計の針を動かしています。ゼンマイ機械(テンプ)式とは比較にならない高振動を歯車の輪列運動に伝えていますので、針は滑るように完全なスイープ運針を見せてくれます。なお、現在のクオーツ時計がスイープ運針ではなく、1秒ごとに針を動かすステップ運針の方式を採用するのは「1秒に1回だけ針を動かすことで外部からの電子的な影響を受けることを防止する」「電池の消耗を防ぐ」「1秒という単位を明確に見せる」ことが目的のようです。

 1960年に登場した音叉時計の精度は1ヶ月の誤差が1分程度でした。新世代腕時計として“ダークホース”的な存在でしたが、1970年にセイコーが“年に数秒の誤差”という桁違いの精度を誇るクオーツ腕時計を世に発表すると、瞬く間に消えてしまいます。現在、現行音叉時計はどのメーカーからも販売されていません。

  

  

  

  

アキュトロンの音叉発生部分は見た目からX型と呼ばれているそうです。

     

  

 オーバーホールの際、写真を撮ってもらいました。時計店の店主も「300個のツメは肉眼では見えなかった」と言っています。箱の真左の一番上の車が300のツメを持つ車。