EBERHARD

  

  

  

  

  

   

 90年代後半から日本でもEberhard/エベラールが注目されるようになりました。それまで、日本ではほとんど知られていなかったメーカーです。創業地、現在地ともにスイスですが、イタリアと縁の深いメーカーで“ラテン・ウォッチ”などと呼ばれることも。

 創業以来、イタリアを主なマーケットに据えていたことと、同国の軍用時計を手掛けたことなどで、イタリアでは“覚えの良い”ブランドのようです。

 この時計は機械の構造などから1940年代のものと推測しています。Eberhard&Coのロゴは昔から変わっていません。偶数飛びのインデックスは“遊び心”があります。

 機械は極初期のセンターセコンドで、特徴的な「出車構造」を持っていました。 2001.7 update

    

  

  

   

  

  

  

 テンプを観察すると切りテンプでした。以下はYanaさんから頂いた解説です。

 テンプやヒゲは温度によって膨張、収縮するため、昔はそれを補正しないと正確な時計は作れませんでした。そこで膨張率の違う金属を張り合わせたテンプを作り、温度上昇時にテンワが小さくなるよう変型させることでこれを補正しようとしたのが切りテンプ(バイメタル切りテンプ)です。その名の通り、テンワが連続した円ではなく途中で切れています。これは先の説明のとおり変型させるため。インバーなどの温度変化の少ない金属の発明によって不要になり姿を消しました。

 ※下の写真はkuroさんから頂いています。

  

  

  

スモールセコンド ※差しているのは車の軸

 スモールセコンドはその名の通り、秒針の役割を6時位置上のスモールセコンドが担います。スモールセコンドは機械式時計のベーシックな形で、現在、多くの時計に見られるセンターセコンド(秒針が中央に基軸する)はその発展した形です。

 スモールセコンドでは、60秒に1回転する四番車の軸に秒針が備わっています。センターセコンドでは三番車の力を四番車に伝えながらも、同時に三番車上に「車」を追加し、中央、二番車の位置に動力を伝導。二番車は分針として機能していますので、分針の軸と重なる筒状の別軸を通じて、中央に配した秒針を動かします。ちなみに時針は二番車の動力を減速車を介して、同じく二番車上位置に付けられます。

 出車の「出」は外に出ているという意味です。初期のセンターセコンドに見られるレイアウト。出車に噛み合う軸受けも含めて「スモールセコンドを改造した」イメージが持たれます。