GRUEN PRECISION AUTOWIND Cal.710

  

  

  

  

  

  

 アメリカの時計メーカーGRUEN/グリュエンの自動巻です。14金無垢のワンピースケース。1950年代の時計ですが、素晴らしい程度を保っています。グリュエンの時計は初めてですので同社の歴史から調べることにしましょう。

 1874年、ドイツ生まれのアメリカ人Dietrich Gruenがオハイオ州の州都コロンバスに小さな時計工房を開きました。これがGRUENのスタートとなります。彼は27歳までドイツで時計職人の見習いをし、その後3年間スイスで時計作りを学びアメリカに渡りました。1879年、その時計工房は「Gruen & Savage」という名の時計メーカーになります。1894年からは彼の息子Friedrich Gruenが経営に参加。その時点から社名は「D.Gruen & Son」になり、さらにその3年後もうひとりの息子Georg Gruenが経営に参加すると社名は「D.Gruen & Sons」つまりSonが複数形になりました。当時、ムーブメントはスイスとドイツのグラスヒュッテから輸入して使用していたとのこと。

 世紀が変わりスイスは世界の時計機械供給地として絶対的な地位につきます。そこでGRUENは1903年、スイスのBienne/ビエンヌに時計機械製造会社「Gruen Watch Manufacturing Company」を設立しました。一方で時計ケースの製造についてはGRUENの主要なマーケットであったアメリカで行い、機械をケースにおさめ完成品にする作業もアメリカで続けていきます。これは完成品の時計にかかる輸入関税を逃れる方法でもありました。GRUENはこのスイスの自社工場を使って積極的に新しい時計機械を開発、1908年には他のメーカーに先がけて女性用腕時計の開発に着手、1910年から完成品をアメリカで売り出します。これは爆発的なヒットとなりました。また創業50年のときには金無垢のムーブメントを搭載した記念腕時計を製作。31代アメリカ大統領のHooverや、初めて大西洋無着陸横断飛行を成し遂げたアメリカの英雄、
Charles Lindbergh第一次世界対戦で活躍したアメリカの軍人General Pershingなどに贈呈するなどアメリカの時計メーカーであることを華々しく誇示します。

 当時、GRUENは自社工場以外からも時計機械を調達していましたが、その時計機械工場のひとつに「Aegler company」があります。同社は「Montres Rolex」と「Gruen」に時計機械を提供していたために、30年代初頭の両社の時計に同じムーブメントが使われているのを見ることがあるそうです。GRUENの最大のヒット作は1935年に発表された「Curvex model」。腕の形状にそってスクエアケースがわん曲した時計です。また独創的なアイデア時計も開発してきました。文字盤の“1〜12”の時間表示が瞬時に“13〜24”に切り替わる「Airflight jumping hours/super G」はTWA/トランスワールド航空(セントルイスをベースに主に大西洋に路線を広げた。後にアメリカン航空に吸収)のパイロット用時計として採用されています。他にも自社製機械を載せたクロノグラフやアラームウォッチなどバリエーション豊かな時計をリリース。GRUENは戦前から60年代までアメリカのマーケットで成功した数少ない現地時計メーカーです。

 GRUENウォッチの歴史を調べている時計ファンは多いようで、そのひとり Paul Schliesser氏のページを紹介します。

 時計の紹介に戻りましょう。ワンピースケースは風防を外して時計機械を取り出す必要があります。そこで新たに風防外し(リムーバー)を用意しました。取り出した自動巻機械はブルースチールのネジを複数使用した美しいもの。あまり見ない機械だと思いますので是非ご覧ください。 2003.12 update

    

  

  

  

  

  

  

  

  

  

ワンピースケースですので風防側から時計機械を取り出します

  

  

  

  

 ジョイント式の竜頭は引き抜くことが可能 

  

    

  

  

  

  

 時計ケースはアメリカで製造されました。「CASED & TIMED IN U.S.A」とはケースへの機械搭載作業と最後の機械調整はアメリカで行ったという意味です。

  

  

  

  

GRUEN Cal.710

 一方で時計機械はスイス製。アメリカへの輸入関税を逃れるため部品として輸入していたようです。 UNADJUSTEDとして未調整部品であることを強調。アメリカでケースしました。

   

  

  

   

  

   

テンプにはバランス調整のための肉抜きの跡が見られました。