オメガ・スピードマスターのブロードアローです。2001年のバーゼルフェアで発表されました。搭載される機械は、ブランパンなどに高級ムーブメントを提供するフレデリック・ピゲ製。1996年から開発が進められたピラーホイール式の機械です。Cal.3303と名付けられたこの機械はクロノメーター仕様。現行のスピードマスターでは、ETAベースのオートマチック・スプリットセコンドと、このブロードアローがクロノメーター仕様となっています。新世代の機械は見どころが多く、テンプにはフリースプリング・テンプを採用。緩急針ではなくテン輪に備えられたネジによってのみ調整を行います。またリザーブは55時間。クロノグラフとしては強力なバレルを備えています。防水は100メートル、ストップセコンド(ハック)機能付き。
無反射コーティングのサファイアガラスを採用しているので、マッドなクリーム色の文字盤が奇麗に視認できます。またブルースチールの針とインデックスとのコントラストも素晴らしく、良い意味でスピードマスターらしくない軟派感。ちなみに黒文字盤の針にはロジウムメッキが施されているそうです。
ブロードアローとは採用する「ブロードアロー針(アローハンド)」から名付けられています。スピードマスターのファーストモデルがこの形状針を使用していました。現行モデルではファーストレプリカやプロフェッショナル・ムーンフェイズ、デジアナX33などに採用されいます。
現行スピマスのオートマチックには大きく3種類の機械があります。ETA2890の自動巻ムーブメントにクロノグラフ機構を合体させた(二階建て)OMEGA/Cal.1140系、縦三つ目のETA7750をベースとしたOMEGA/Cal.1150系、そしてこのブロードアローに搭載されたフレデリック・ピゲの機械です。それぞれに持ち味があり、特にプッシュボタンの使用感、ローターの回転感覚は明らかに異なります。ブロードアローは唯一のピラー・ホイール式ですのでプッシュボタンの感覚に期待していましたが、(スタート・ストップボタンを押した際の)ピラー式独特の“カッチリ感”はほとんどありません。レマニアのカム式クロノグラフのようです。ボタンの押し、戻しのストロークが狭いのも特徴。ピラー式クロノのボタン操作時に発生する微少なタイムラグやズレを回避するため、設計された結果だと想像しています。
バーゼルフェアでは華々しくデビューしましたが、いまひとつマイナーなブロードアロー。フレデリック・ピゲが専用に設計した機械を搭載するクロノグラフと考えれば50万円ほどの値段にも納得ですが、スピードマスターとして見たときには高価すぎるのが原因でしょうか。 2003.1 update
2007.9 追記 2007年のバーゼルフェアにてシースルーバックモデルがスピマス誕生50年の記念モデルとして発売されました。ベゼルは鏡面から無反射仕様に、ここで紹介する初代モデルに比べると文字盤はさらに手の込んだものになっています(外周部、内側、インダイヤルごとに仕上げが異なり、文字盤の色も白と銀の中間のように絶妙な発色)。個人的に初代モデルに持っていた不満が全て解消されていました。
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