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縦二つ目の機械式クロノグラフを初めて入手。ネットオークションでドイツの方から譲って頂きました。スインギング・ピニオン式のVenus/ヴィーナス170が載っています。 Lortonn Watch Coの筆記文字とアラビア目盛りがとても上品。スクエアなプッシュボタンとラグのデザインはアンティークウォッチならではです。 スインギング・ピニオン式の感触なのでしょうか、独特なクロノグラフ操作感です。ピラーを回す感覚はありますが、バルジュー23や72などで感じる、ボタンの押し/戻しの「カッチリ」の2動作感触※はありません。機械を観察して分かったのですが、これは同じピラー式でありながらヴィーナス170がスタートの際にピラー回転を1動作しか行わないことによります。 2001.7 update |
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スタート スタート/ストップボタンを押し込んだ際、ボタンと連動するツメはピラーホイール「下の階」の“歯”に引っ掛かった状態で手前に引きピラーホイールを「時計回り」に回転させます。ここでカップリングクラッチの先端がピラーホイールの山の部分の乗ります。※ これに連動して常時回転している“軸”ピニオン(一番右の赤丸)がクロノグラフランナー側に移動、接続します。ピニオン側の動力をクロノグラフランナーに伝えることで、クロノグラフランナーが回転、つまりクロノグラフの秒針が動き出します。 ピニオンが移動・接続=スイングすることで、この機構のことを「スインギング・ピニオン式」と呼ぶようです。 ※ 面白いことにピラーの乗り降りがキャリングアーム式とは逆になります(キャリングアーム式はスタートの際に谷の部分に落ちます)。ピラーの使い方は同じですので、単に構造の違いです。キャリングアーム式についてはこちらを参照。 |
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ストップ スタート/ストップボタンを押すと、再度、ボタンと連動するツメがピラーホイール「下の階」の“歯”を手前に引きピラーホイールを「時計回り」に回転させます。ここでカップリングクラッチの先端がピラーホイールの谷の部分に落ちます。 これに連動して常時回転している“軸”ピニオンがクロノグラフランナーから離れます。クロノグラフランナーにピニオンの動力が伝わらなくなり、クロノグラフランナーの回転はストップ。またブレーキレバーがクロノグラフランナーを保持し(右から2番目の赤丸)姿勢を保ちます。 この際にリセットハンマーの根元の突起はピラーの谷の上にあるのでハンマーの稼動が可能となりリセットボタンが機能できる状態になります。クロノグラフ起動中にはこの突起がピラーホイールの山に引っ掛かりリセットできません(スタートの写真参照)。この構造によりクロノ針が動いている際にはリセットボタンが機能しないのです。 |
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リセット リセットボタンからV字型の機構(ピラーの真下)を介してリセットハンマーを起動させます。写真はリセットボタンを離した状態ですが、押し込んだ状態のときに、V字型の機構の下側をたたきリセットボタンの力がリセットハンマーに伝達します。 リセットハンマーがクロノグラフランナー(右下の赤丸)とミニッツレコーディングホイール(一番上の赤丸)の根元にあるハートカムをたたいてリセット(クロノ針、積算針を0に)します。リセットハンマーの根元の突起(左上の赤丸)がピラーの谷にはまっていますね。 またスライディング・ギアが上方向にスライド。先端に付いたミニッツレコーディング・インターミディエイトホイール(中間車)がクロノグラフランナーから離れます。そのことでリセット時にクロノグラフランナーとミニッツレコーディングホイールが互いに干渉せずリセットできます。離れる距離は微少ですが、クロノグラフランナーのスポークに開いた穴に見えていた中間車が移動して見えなくなったのが分かります。ストップの写真と見比べて下さい。 |
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スタート 常時回転している“軸”ピニオンがクロノグラフランナー側に移動、接続。 ストップ ピニオンがクロノグラフランナーから離れます。ブレーキレバーがクロノグラフランナーを保持し姿勢を保ちます。 リセット リセットハンマーがクロノグラフランナーの根元にあるハートカムをたたいています。スライディング・ギアが上方向にスライド。先端に付いたミニッツレコーディング・インターミディエイトホイール(中間車)がクロノグラフランナーから離れます。クロノグラフランナーのスポークに開いた穴に見えていた中間車が移動して見えなくなったのが分かります。 |
Venus/ヴィーナス 1942年、スイス、ベルン州ミュンスターにて創業開始。1928年エボーシュSAに参加後、クロノグラフの製造を中心に行う。1966年に同社名の機械製造を終了。 |