機械式アラームウォッチの元祖、ヴァルカンの『クリケット』。現在は「レビュートーメン」ブランドで同じ『クリケット』銘のアラームウォッチが発売されています※。

　テレビモニターのようなケースとグラデーション・ブルーの文字盤はサイケデリックな雰囲気。同社の『クリケット』は1947年から発売されている歴史ある時計ですが、1960年代の終わりに発売された最晩期の製品でしょう。

　クリケットの見どころはその搭載機械。同シリーズの機械にもいくつかの種類がありますが、ここで紹介する時計には最上級機が載っています。クロノグラフのムーブメントにも劣らない複雑さと美しさ。時計駆動用とアラーム用の２つのゼンマイが独特です。機械にはパテント・ナンバーの刻印を見つけることもできました。　

　興味深いのはゼンマイの巻き上げ。リューズを上方向に回すとアラーム用ゼンマイが、下方向に巻き上げると時計駆動用ゼンマイが巻き上がります。１つの竜頭で異なるゼンマイを巻き上げるアイデアは同社のオリジナルのようです。　　　　　　　2001.5 update

　デッドストック（NOS）で入手しました。箱やタグからも当時の雰囲気が伝わってきます。タグを見ると、当時いろいろな雑誌で紹介、広告されたようです。

　バルカンは複数の時計メーカーと合併。現在はレビュー・トーメンがブランドとして現存しています。よって現在は「バルカン」のブランドの時計はリリースされていません。※それどころか「レビュー・トーメン社がクリケットを作った」という立場で時計をPRしていますので「バルカン・ブランド」は触れてはいけない歴史なのかもしれません。詳細はこちら。※※（追記）200１年にPMH SA（Puroduction&Marketing Horloger）が「バルカン社」「クリケット」のブランドを買収。バルカン銘での「クリケット」製造が再スタートする。

　ブリッジとテン輪の下にMSRと刻まれていますね。MSRの正式名称はMANUFACTURES D'HORLOGERIE SUISSES REUNIES SA。1970年前後にRevue-Thommen、Phenix Watch、Buser、Vulcainが集合したムーブメントの連合会社。

　詳しくはこちら

　機械式アラームの仕組みを簡単に説明します。機械の写真の一番上に見えるのが「アラームハンマー」。(1)(2)を見比べて分かるように、このアラームハンマーがアラームゼンマイの動力によって上下に震え、裏蓋に付いている突起（３）に当たります。この音が二重構造のケース内に反響、アラーム音となります。

　クオーツなどのアラームとは比較にならないほどの大音量でビックリします。