1990年代の半ばにSEIKOが展開したブランド「LAUREL」。セイコーが本格的に機械式腕時計の製造を再開したブランドで魅力的なモデルを数多く揃えました。既に製造が中止されたブランド/シリーズですが、私も何本かの時計をコレクションしています。 今回入手したのは銀無垢トノーケースのモデル。落ち着いた深いブルーの文字盤にシルバーの柔らかい銀色が奇麗なコントラストとなっています。2000年頃から機械式時計で流行しはじめたトノーケースを90年代の半ばに製品化しているあたりは先見の明があったのでしょうか。銀無垢ケースの腕時計はセイコーの歴史の中でも非常に珍しく、私もこの時計を所有してはじめてその魅力に気付かされました。 シルバーは落ちついた柔らかな白い光沢、光の反射が特徴。一方で金属の中ではもっとも可視光線の反射率が高く(反射率は90%、赤外線は98%を反射します)研磨によってはプラチナよりも強い輝きを出すことが可能です。この腕時計に使われている銀は925/スターリングシルバー。純度の順は純銀/1000、ブルタニア/950の次で、純度を下げた分、硬度を高めた銀素材です。ちなみにさらに純度を落とした銀素材には貨幣などに使われるコインシルバー/900があります。 まめな手入れが必要な銀素材を現行時計のケースに採用するのはなかなか勇気がいったことでしょう。手入れをしながら長く愛用する“趣味の時計”としては最高の逸品。以下では「銀のくすみ除去」もレポートしています。 2004.3 update |
カーブしたケースとベゼル部、ガラス風防が奇麗に積み上がっています。特に厚めのガラスがケースから柔らかく立ち上がっており、シルバーの鈍い光沢と相まって優しい雰囲気に仕上がっています。 |
90年代の機械式時計復権にあわせてセイコーからも魅力的な時計がリリースされました。ただしマーケットにおいては時期尚早だった為、いずれも短命に終わっています。 |
銀無垢ケースは空気中の硫黄分により硫化銀の皮膜を作り黄色、次に茶褐色に変わり、更に皮膜が厚くなると徐々に黒ずんでいきます。淡い変色はむしろ銀の魅力なのですが、黒ずんでくると手入れが必要。銀は金やプラチナと違い原子的に安定しておらず化学変化を起こしやすいのでこのように変色をおこします。布などで磨いても取れなくなった硫化した皮膜を取り除くには液体薬剤を使うのが簡単。科学的にシルバーの表面の硫化銀皮膜を落とします。 ここで紹介している時計もところどころ茶褐色に変色しはじめていましたので液体薬剤を使ってくすみ、よごれを除去しました。 |
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銀だけで出来た製品(指輪など)の場合はこの液体に10秒ほどひたすそうです。時計を液体に沈めるわけにはいきませんので銀部分に塗る事に。 |
薬剤の説明書にもありましたが薬剤が手に触れると少しヒリヒリします。特に皮膚の弱い方は水作業用のビニール手袋を使うといいでしょう。また洗浄後すぐはケースの表面が酸化してすぐに白く曇ってしまいます。しばらく時間を置いて何度かみがくと安定して曇らなくなりました。光沢を持続する銀製品用のワックスも売っていますので洗浄後にケアしてもいいかもしれません。 手入れした分、時計にも愛着がわくことでしょう。
(追記) その後、色々と試してみましたが100円ショップで売っている「シルバーお手入れシート」が最も有効なことが分かりました。簡単、速効に銀のくすみが取れます。是非お試しください。 |