ROLEXの1ブランドであるTUDOR(チュードル)のサブマリーナです。先に所有していたサブマリーナ・ボーイズRef.75190の前モデルであるRef.75090。両モデルとも既に廃盤となっており、現在はTUDORからサブマリーナはリリースされていません。 TUDORはロレックスの「ディフュージョンブランド」と言われていますが、「ディフュージョンブランド」とはどういうものなのか少し考察してみましょう。 1960年代頃までスイスの各時計メーカー(完成品メーカー)が、販売するマーケットや購入層ごとに複数のブランドを持つことは少なくなかったようです。ロンジンが北米市場に展開した「WITTNAUER(ウィットナー)」、同じくブライトリングの北米向けブランドである「WAKMANN(ワックマン)」。Jaeger-Lecultreと「Lecultre(ルクルト)」も同じ関係のようです。その多くは桁違いのマーケットであったアメリカへの輸出、そしてそこでの販路拡大を目論み新たなブランドを立ち上げたました。 今以上に保護貿易の考え方が強固だった時代ですので、高級品への関税は非常に高率です。決められた“値段制限”を超えた製品には高額な税金が課せられました。数を売ろうとしたメーカーは廉価製品を用意せざるを得ません。日本もそうでしたが、値段以前にケース素材でもかかる税金は異なりました。特に金やプラチナ製品への関税は高額だったことから、ディフュージョンブランドの多くは貴金属の無垢製品は少なく、ステンレスや金メッキ製品がほとんどです。時計部品にUNADJUSTEDと刻印し、時計を“未調整の部品”として登記、完成品よりも安い関税で輸出入したことは頻繁でした。他にも石数などによって関税の乗率が違うということもあったようです。 また現地マーケットの趣向に合わせたり、同じマーケットの中でも購入層ごとにブランドを複数設定することも珍しくありません。セイコーは1979年から欧米向けブランドの一つとして「PULSAR」を展開しています。これはハミルトン(1979年当時はSSIHグループ/現在のスウォッチグループ)の1ブランドであった「PULSAR」という名前を買収。関税などとは無関係に、よりマーケットや購入層に適したブランド展開を行っています(参考)。 現在は歴史ある欧州時計メーカーの多くが「スウォッチグループ」「リシュモングループ」「LVMHグループ」に属し、それぞれのメーカー自体が細分化されたマーケット、階層に向けて、“決められた役割”の製品展開を行っているので「ディフュージョンブランド」という概念は一般的ではなくなっています。一方でどのグループにも属さない、独立した時計ブランドであるROLEXにおいては、今なお「ディフュージョンブランド」としてのTUDORの役割はあるようです。 さて、TUDORブランドが立ち上がったのは1930〜40年代。目指したマーケットはイギリスと言われています。ひとつの時計メーカーが複数のブランド展開を行うことがまだ珍しかった時代。色々と理由はあったでしょうが、ROLEX“銘”ブランドの製品とは“時計機械”に若干の差がありました。一方、時計ケースは最大のセールスポイントであったオイスターケースを中心にROLEXと同じものを使い、これが奏功してTUDORはブランドとして成功したと言われています。現行のTUDOR製品も(ROLEX“銘”製品が全て自社製機械を使っているのに対して)エボーシュ(時計機械メーカー)のETA製機械がベース。また徐々にROLEX色を排しているようで、現行製品ではここで紹介するサブマリーナのような“ロレックスそっくり”時計はなくなりつつあります。 ROLEX製品に比べると値段、知名度ともに低いTUDORですが、ROLEX人気につられてここ数年、日本国内でも知名度は上がりました。特に廃盤となったヴィンテージウォッチに人気が集中しているようです。一方で現行TUDOR製品は正規輸入されていません(日本ロレックスはTUDOR製品を扱っていません)。 本題に入りましょう。今回紹介するRef.75090は1980年代の製品。ROLEX色が“ぷんぷん”で、裏蓋や竜頭にはお馴染みの「王冠マーク」もしっかり刻印。顔もROLEXのサブマリーナそのものですね。今回は先に所有していたRef.75190との比較を中心に時計を紹介していきます。 2003.11 update |
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先に所有していた一代後継のRef.75190と比較してみましょう。何より文字盤(ベゼルも)の色調が異なります。Ref.75190は紫がかった青色ですが、Ref.75090はインディゴブルー系。イングランドのチューダー家の紋章をかたどった「盾マーク」も微妙に痩せています。また「PRINCE OYSTERDATE」と「PRINCE DATE」の表記の違いも確認できますね。 ※Ref(リファレンス)とは製品番号のようなものです。 |
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テンプの下にCal.ナンバーの2824-2の数字とETAの刻印が見られます。テンプ左の刻印はそれぞれ違うようです。 |
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今回入手したTUDOR・Ref.75090には当時の取扱説明書が付属していました。Ref.75190と合わせてこちらにアップしています。Ref.75090に付属していた取扱説明書では、今回のサブマリーナのさらに一代前の製品が掲載されていますので微妙に時代がずれています。逆に新品で購入したRef.75190に付属していた取扱説明書では、サブマリーナの後継モデルであるハイドロノートが掲載。いずれも新モデルへの以降期に卸されたもので、製品と取扱説明書にズレが生じたのでしょう。 |