CITIZEN COSMOTRON SPECIAL

  

  

 自宅近郊の骨董品屋で購入、デッドストック(NOS)でした。コスモトロンは電池を動力源に機械式時計の機構で時を刻む「電磁テンプ式時計」(シチズンは「電子時計」と呼ぶ)。国内では1972年に発売されたようです。動力機構以外は機械式時計と似かよっていますので精度は機械式と大差ありあせんが、振幅が一定であることで理論上は機械式時計よりも精度は出るはずです。何より当時は手巻きをせずに放置しておいても「止まる事がない時計」は画期的な製品として受け入れられたようです。一方で同時期(1969年〜)、セイコーのクオーツ腕時計が登場したことにより「電磁テンプ式時計」は数年で姿を消してしまう運命にありました。

 ケース右下にプッシュボタンが見えます。これは「JUST SETTING」と呼ばれ、このボタンを押すと秒針が瞬時に帰零。時報などに合わせて時刻調整をするためのものです。仕組みはアナログクロノグラフのリセットハンマーと同じ。ワンプッシュクロノやフライバック機能と同様のものと考えていいでしょう。2001.1 update

    

  

   

  

  

  

  

1972年当時で定価23000円

機械式の香箱(ゼンマイ)がある位地に電池があります。

  

2001.12 追記

 電池を動力源にしてテンプで時間を制御する時計は電磁テンプ式と総称されます。1957年、ハミルトン社(米)が基本技術を開発。その技術転用のようですが、国内では1966年にシチズンがこの技術を使った時計をリリースします。セイコーも一部、製品をリリースしますが1969年にクオーツを開発したメーカーでもあり、電子テンプ式には積極的ではなかったようです。市場シェアはシチズンの独占状態だったとのこと。クオーツが普及するまではそれなりの市場を持っていたようです。

 当初は新しい技術であることもあり相当な高級機でした。初号機のモデル銘は「X8」。その後、普及機である「コスモトロン」がリリースされ一般に認知されました。

 「コスモトロン」銘の時計にも「X8」の文字が入るものが多いようです。シチズンにおいて電子テンプ技術を「X8」と呼び文字盤に残したのかもしれません。振動数は5振動からスタートして「2代目コスモトロン・クロノメーター/Cal.0821」で6振動化します。

 「コスモトロン・スペシャル」は同社電磁テンプ式の最終モデルで振動数は10振動まで高振動化。観察してみる綺麗なスイープ運針を行います。機械的な特徴としてはガンギ車、アンクルがなくなりインデックス車という機構を搭載。これにより高速のテンプ運動を一定方向の回転運動に変換することを可能にしたそうです。

 また「時報合わせ装置」では0時ちょうどから前後3分以内に右下のボタンを押すと、秒針だけではなく長針、短針も0時位置に帰零します。その他の時間では秒針が帰零するだけです。

 参考文献 「国産腕時計8 シチズン新本中三針」