MOVADO DATRON HS360  3019PHC/EL PRIMERO

   

   

   

   

    

 

  

ステンベルトに交換

  

    

 Movado(モバード)のDatron HS360。紫がかったグレー文字盤がヴィンテージな雰囲気です。12時位置のカレンダーにも特徴的。

 この時計には“El primero(エル・プリメロ)”の開発当初キャリバーが搭載されています。エル・プリメロが開発されたのは1969年のこと。製造は1970年代中頃に一時中断され1980年初頭に復活をとげます。開発メーカーとしてはZenith(ゼニス)ばかりがクローズアップされますが、Movado(モバード)は共同開発メーカーでした。開発当時の機械名称は『Caliber 3019 PHC』。当時のゼニスとモバードはこの機械を搭載したクロノグラフをリリースしました。ゼニスはモデル銘を“El primero”とモバードは“Datron HS360”と名づけています。つまり現在、機械の名称として知られる“El primero”は『Caliber 3019 PHC』を搭載するゼニス製の時計モデル銘だったわけです。ちなみに“El primero”とは英訳すると“the first”。世界で最初の自動巻クロノグラフ開発の偉業を称えたようですが、実際にはホイヤーやブライトリングなどが共同開発した“chronomatic”に数カ月遅れてのリリースとなったようです。この歴史についてはこちらで紹介しています。 2001.8 update

    

  

   

  

  

  

    

     

      

 ローター以外は一般的なピラーホイール式クロノグラフと同じ構造であることが分かります。右の写真、ローター上部に位置する金色の車を介して、ローターの回転によって発生する力がゼンマイに蓄積。毎秒10振動/毎時36000振動の超ハイビートマシーンは、テン輪もさることながらガンギ車が高速で動き続きます。『3019 PHC』の“30”は機械の直径が30mmであることを明示。

       

 ローターにはベアリング機構を採用。ボールを7個を使っているようです。この機械は手巻兼用。

 3019 PHCの刻印も確認できました。現行のEl primeroベーシックモデルにはCaliber 400の「400」という数字が刻まれています。

 

    

スタート カップリングクラッチの先端がピラーホイールの谷の部分に落ちます。これに連動してトランスミッションホイールとクロノグラフランナーが噛み合います(トランスミッションホイールとドライビングホイールは常時接続)。ドライビングホイールの動力をクロノグラフランナーに伝えることでクロノグラフランナー、つまりクロノグラフの秒針が動き出します。

 この際にリセットハンマーの根元の突起はピラーの山に乗っているのでリセットボタンを押してもハンマーは動けません。つまりリセットできないのです。

ストップ カップリングクラッチの先端がピラーホイールの山の部分に乗ります。これに連動してトランスミッションホイールが下方向にスライドし、クロノグラフランナーから(僅かな距離ですが)離れます。つまりクロノグラフランナーが止まり、クロノグラフの秒針がストップします。

 この際にリセットハンマーの根元の突起はピラーの谷の上にあるので左右への動きが可能となりリセットボタンが機能できる状態になります。

リセット リセットの際にはピラーは回転しません。リセットボタンと連動したリセットハンマーがクロノグラフランナーとミニッツレコーディングホイール(左上の車)の根元にあるハートカムをたたいてリセット(クロノ針、積算針を0に)します。スライディング・ギアも移動していますね。リセットハンマーの根元の突起がピラーの谷に綺麗にはまっていますね。バルジューの手巻きピラー式と異なるのは3019PHCはこの状態で次のスタートまで待機することです。バルジューの手巻きピラー式はリセットボタンを離した時点でハンマーがストップ時の姿勢に戻ります。

スライディング・ギアについてはこちらで説明しています。

  

  

  

オーバーホールの際に分解写真を撮影しました。