タグ社と合併する以前のホイヤー社のクロノグラフです。「AUTAVIA/オータヴィア」とはAutomobile/自動車とAvion/航空機を組み合わせた造語。ホイヤーのクロノブランドとして様々な時計に使われた製品名のようです。この時計はネットオークションを通じてアメリカの方から譲って頂きました。ほぼ未使用の状態です。ケースはデカアツで迫力満点。重量も相当です。赤針がクロノ針、右目が分積算、左目が時積算、よって秒針はありません。ベゼルはタキ・メーターで回転仕様。このベゼルが分表示のモデルもあるようです。 搭載機械のクロノマチック(自動巻クロノグラフ)はHeuer/ Breitling/ Buren/Hamilton/ Dubois Deprazが共同開発したと言われています。会社関係をもう少し整理すると、Hamiltonは1966年にBurenを買収。クロノマチック発表当時には同一メーカーでした。ちなみに開発には50万スイスフランを費やしたそうです。 2001.9 update |
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開発当初のクロノマチックCAL.11は毎時19800振動/毎秒5.5振動でしたが、CAL12になり毎時21600振動/毎秒6振動に高振動化されます。 |
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クロノマチックはスイング・ピニオン式を採用。左の写真では常時回転しているスイング・ピニオン(軸)がクロノグラフランナーと離れていますが、クロノグラスをスタートさせると右の写真のように接続し、回転力がクロノグラフランナーに伝わります。またクロノグラフランナー左のブレーキレバーの保持と解放も見ることができます。スイング・ピニオン式についてはこちらで詳しく説明。 |
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スタートボタン(押す) リセットが解除(一番下のリセット状態からリセットハンマーが上の写真の位置に移動)。カムを通じて常時回転しているピニオンがクロノグラフランナーに接続、クロノグラフランナーが回転を始めます。 リセットハンマーと一体となったカムを採用するカム式クロノグラフです。 |
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スタートボタン(離す) |
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ストップボタン(押す) クロノグラフランナーからピニオンが離れ、クロノグラフランナーの回転がストップします。あわせてブレーキレバーがクロノグラフランナーを押さえ姿勢を保持。 |
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ストップボタン(離す) |
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リセットボタン(押す) ブレーキレバーからクロノグラフランナーが解除され、リセットハンマーがクロノグラフランナーと積算車の根元にあるハートカムたたきます。スライディンギアを採用していますので中間車が下方向へ移動。リセット時にクロノグラフランナーと積算車の相互干渉を回避。 |
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リセットボタン(離す) 帰零後、ブレーキレバーが再びクロノグラフを保持。リセットハンマーはハートカムを叩いたままの状態でスタートに備えます。 |
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クロノマチックは「時計の基幹ユニット」と「クロノグラフ・ユニット」を後から合体させたような構造を持っています。さらにローターは直径が文字盤の半分程度のマイクロ・ローターを採用。このユニットはビューレンの機械を基礎としています。この2つの機械を合体させようとすると、どうしても竜頭が9時位置にきてしまう。ただし、この機械は自動巻で手巻兼用ではないので、当初、奇異に思えた竜頭の配置も「クロノ操作時に竜頭が邪魔にならない」とオートマチックのクロノグラフの長所としてPRされたようです。 |
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マイクロ・ロータが回転しない死角はたったの11度とのことで、非常に回転効率の高い構造になっています。また緩急機構も非常に高精度のものが専用に開発され、クロノマチック発表時に合わせて特許を取得。結果、クロノメーターに要求された規準に近い精度を達成するとも言われています。 |
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クロノマチックの開発は他社との競争がありました。これは「世界初の自動巻クロノグラフ」の栄冠をゼニス/モバード連合と競ったことによります。結果、1969年3月3日にクロノマチックは公式発表され、同年4月のバーゼルフェアでお披露目されました。ここに「クロノマチックが世界初の自動巻クロノグラフ」である根拠があるようです。同じ年の秋に現在エルプリメロとして知られる3019PHCがゼニス/モバード連合から正式発表されています。なお、同年、日本のセイコーからcal.6139という自動巻クロノグラフ機械を搭載する時計が市販されます。セイコーについては開発競争を意識していたかどうかは分かりません。“世界初”の議論には時計ファンのあいだでも諸説紛々あるようです。ただし1969年がクロノグラフ機械の開発において最も熱い年であったことは間違いありません。またこの年のクリスマスにセイコーからクオーツ式腕時計が世界で初めて発売されています。1969年は腕時計技術そのものがブレークスルーした年でもありました。 |