PIAGET Cal.12P

  

  

  

  

 PIAGET(ピアジェ)の自動巻です。ネット・オークションを通じてヨルダンはアンマンの方から譲って頂きました。搭載されている機械は同社マイクロ・ローターCal.12P。珍しい横オーバル・ケースはいかにも宝飾時計を得意とするPIAGETらしい造形です。非常に薄型の時計で、販売された60年代にはこの薄さに大きな価値があったことでしょう。一番の見どころは前述の搭載機械Cal.12Pです。

 この時計の入手を機会にPIAGETの歴史を調べてみました。

 1874年、Georges Piagetは時計産業の盛んなスイス・ジュラ渓谷の麓にあるLa Cote-aux-Fees(ラ・コート・オ・フェ)にて懐中時計の製造業をスタートします。これがPIAGETの起源。当初より調整、仕上げ、装飾など時計のデザインに関する作業を分業として手掛けていたようで、宝飾時計メーカーの色が強い同社の特色はここに起因するようです。1900年代に入ると彼の息子たちが事業を引き継ぎ、さらに1950年代はじめに会社の責任者となったGeorges Piagetの孫にあたるGerald and Valentin Piagetは同社を一流ブランドに押し上げる手腕を見せました。得意とした宝飾時計を手掛ける一方、その製造においてはケース、機械、ベルトまで、全てを一貫製造することで、PIAGETは数少ない“manufacture”(マニュファクチュール/時計を一貫生産する高級メーカー)として認められるようになります。同社初の自社製手巻き機械は1956年に製造をスタートした9Lignes(9型/1Lignes=2.256mm)サイズのCal.9P。今回紹介する自動巻機械Cal.12Pは1959年に製造を開始した腕時計用自動巻機械。同社が自社製造した唯一の自動巻機械です。Cal.12Pが時計史に残るとされるのは、その機械の造形美と共に“世界最薄自動巻”の記録を保持し続けた名誉によります。機械の薄型化に有利なマイクロ・ローターを採用し、ムーブメント高をわずか2.33mmに抑え込みました。この最薄記録は製造が開始された1959年から1978年までの長期に渡り、自動巻機械の世界最薄記録であり続けます。

 クォーツ製腕時計が誕生するまでに、マイクロ・ローターを手掛けたのはBurenとUniveresalそしてPIAGETだけでした(一覧)。Burenのマイクロ・ローター最終機Cal.1280系(1962〜)のムーブメント高は2.85mm、Univeresalのマイクロ・ローター最終機Cal.2-66系(1963〜)がムーブメント高2.5mmと、2社の機械はいずれもPIAGET・Cal.12Pより後の設計ながらこれより薄型化を達成していません。

 1964年には時計メーカー「Baume&Mercier」の工場を買収し時計機械の自社製造を徹底します。しかしPIAGETの製品は手のかかる宝飾品的な高級品ばかりでいずれも超高額品であることから、最盛期であっても年間の製造個数は1万個に満たないレベルであったと言われています。

 1988年、46歳のYves Georges Piagetが同社を率いていたときに、南アフリカ資本であるVendomeグループ(参考)がPIAGETの株式の60%を押さえ、同社の主導権は創業家を離れました。1993年には創業家が全ての株式を放出、完全にVendomeグループ傘下となります。ちなみにVendomeグループは80年代から、Cartier、Vacheron&Constantinなど超高級ブランドを買収。その後、90年代には上層のリッチモンド・グループがLMHグループ(ジャガールクルト、IWC、ランゲ&ゾーネ)をその傘下としています。リッチモンド・グループ傘下の時計メーカーは、年一回の世界最大の時計展示会「バーゼルフェア」からも離脱し、独自に「ジュネーブサロン」を開催しています。 2005.7 update

    

 

   

  

竜頭は宝石で装飾 

    

  

  

  

  

  

極小のネジで裏蓋がとめられています。

  

    

  

  

  

  

  

  

  

 

    

  

  

Cal.12P 19800振動/時 5.5振動/秒 24カラット金無垢ローターを採用。

“切替車方式”を使い両方向巻上を実現した唯一のマイクロ・ロータ機械です。

※BurenのCal.1280(1962〜)、UniveresalのCal.2-66は“遊動車方式”を採用

  

  

  

6姿勢調整、固体番号、機械番号、4つのパテントナンバーが刻印