RECORD Cal.174

  

  

  

  

  

 Recordの自動巻です。非常に珍しい自社製機械を搭載。現存数も僅かだと思われますが、未使用状態のものを入手することができました。時計機械については下で検証しています。

 ケースは非常に手の込んだ造形。面取りは複雑で、ラグ間のベゼル外側の部位は珍しい3面構成となっています。初期の自動巻機械は非常に厚く、これを包み込むためにボリュームのあるケースとなりますが、デザインに直線を多く取り込むことで厚さを目立たせないようにしたのかもしれません。文字盤の精緻な立体インデックスや夜光の仕様などからも高級品であったことがうかがえます。

 まずはあまり知られていないRecord社の歴史から調べてみました。

 1899年、Record Dreadnought Watch CompanyはスイスのGeneva・Geneve/ジュネーブに誕生しました。後にTramelan/トラメーランに主要なボランチを置いたことから、スイスではTramelanのウォッチ・メーカーとしても知られています。同社は「正確な時計」を“看板”とするために販売後の対応、修理に徹底してこだわりました。時計部品の製造やストックを積極的に進め、同社製品に修理が必要となった際には迅速な部品交換を可能とする体制を整えたのです。1920年代の中頃までに時計の製造と共に、アフターサービスも行う“ワークショップ”をスイス国内3ケ所に設けていました。この取り組みによりRecord社は自社製品にいち早くギャランティ(品質保証)を持たせています。

 腕時計についてはカレンダーウォッチ、ムーンフェイズ、インジケーターなどを早い時期より手掛け、1930年代に入るとクロノグラフや防水時計も製造するようになります。「DATOFIX」と名付けられたフルカレンダー、ムーンフェイズ、クロノグラフが一体となった複雑時計は特に有名。大戦中にはイギリス軍の軍用時計も手掛け、大量生産に耐える製造体制を整えます。また自動巻機械についてもエボーシュ(解説)に頼らず独自に開発を行いました。1944年に同社初のバンパー式(半回転ローター)自動巻を、1952年にはここで紹介するフルローター式(全回転ローター)自動巻を完成させます。

 しかし1961年に同社はLONGINES(歴史)によって買収されてしまいます。その後LONGINESは「Record」をアメリカ市場向けの廉価製品ブランドとして活用。LONGINESはこれに自社製ムーブメントを搭載することを控え、エボーシュ機械を載せて製品展開を行ったようです。 2005.7 update

    

 

     

  

  

  

  

  

  

  

Cal.174 18000振動 5振動/秒 1953年〜  ※初号機はスモールセコンドで1952年完成。

地盤は丁寧に磨かれ、ローターは鏡面仕様です 

 

  

   

  

ローターの刻印から3姿勢調整の機械であることが分かります

  

  

  

この写真は下の「整流の方法」で参照 

 

   

  

整流の方法

 この機械は「切換伝え車方式/Click Wheel Type」と呼ばれる整流方法を採用しています。大きく「切換伝え車方式」と言ってもその種類は様々で、構造の違いによって多くのメーカーが特許を取得してきました。このRECORDは切換えツメを機械上部・左右に配した構造で、整流方法の理解も進みます。

  

ローターが右回転した場合

 ローターが時計回りに回転すると、これと噛んでいる左右の車「2」が反時計回りの回転を行う。「2」の上部に頭を出した「3」は(歯が一方向に傾いた)ラチェット車になっている。「2」と「3」は一体に見えるが独立した別々の車。この場合は左側「2」の車に付属する「切換ツメ」が左側「3」のラチェットにかかり(赤い四角内)左側「2」と同方向、つまり反時計回りに回転させる。左側「3」のカナ(カナの説明)部分は(写真ではローター下に隠れている)伝え車と噛んだ状態。この伝え車を通じてゼンマイを巻き上げる。なお、右側「3」は同伝え車2つを介して連結しているので時計回りに回転する。このとき右側「2」の車に付属する「切換ツメ」は(その形状から)右側「3」には干渉しない。

  

  

ローターが右回転した場合

 ローターが反時計回りに回転すると、これと噛んでいる左右の車「2」が時計回りの回転を行う。この場合は右側「2」の車に付属する「切換ツメ」が右側「3」のラチェットにかかり(赤い四角内)右側「2」と同方向、つまり時計回りに回転させる。右側「3」のカナ(カナの説明)部分は(写真ではローター下に隠れている)伝え車と噛んだ状態。この伝え車を通じてゼンマイを巻き上げる。なお、左側「3」は同伝え車2つを介して連結しているので反時計回りに回転する。このとき左側「2」の車に付属する「切換ツメ」は(その形状から)左側「3」には干渉しない。

 つまりローターがどちらの方向に回転しても「3」の時点でその流れは整流される。

   

  

  

  

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