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エルジンの1950年代のデッドストック品(NOS)。27石の自動巻き(手巻兼)です。譲っていただいた方の説明によると、全回転式の自動巻きが開発されて間も無い頃の時計とのことでしたが、オーバーホール前でも機械はすこぶる好調、日差は1分もありません。 “ロマンチック”な経年褐色です。数字のハゲ具合なども味がありますね。それでいて未使用品ですからキズひとつない。入手した際には発売当時の箱も付いていました。$59と記した値札が入っていましたが、1950年代当時の物価を考えると高級品だったのだろうと想像します。2000.10 update |
今のエルジンは日本の資本が買収したものです。アメリカンウォッチのエルジンとは全く別ものと考えてよいでしょう。買収前のエルジンはアメリカの歴史あるメーカーでした。1864年にシカゴ市長ベンジャミン.W.レイモンド氏と6人の重役からなる役員会が設立したメーカーで、長い歴史の中では、アメリカの公式軍用時計も手掛けています。廉価な価格で大量生産をはじめた同社は「時計産業界のフォード」とも呼ばれたそうで、時計を一般の人々のものにしたという意味では功績がありそうです。買収後の会社として日本の山口県にエルジンインターナショナルという会社があります。 | |
ワイラー社が特許を取ったと言われるワイラーテンプに似た構造を持っています。テン輪と天真をつなぐ2本のアームを渦巻き形状にして衝撃を軽減。このテンプではルビーを押さえ込む側にも耐震装置が付いています。 |
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上のテンプ部分にはさらにDurabalanceというエルジンが独自に開発したDurabalanceと名付けられたフリースプラング(freesprung)緩急機構が用いられています。上の機械写真を見ると一般的な緩急装置が付いていないのが分かりますね。 フリースプラング緩急機構はジャイロマックス1・2やロレックスのマイクロステラスクリューなどが有名。最近はオメガの機械にも採用されています。緩急針(鬚ゼンマイの長さ)で速度調整せずにテンプの慣性力のみで速度調整する仕組み。この機構の特徴は長期間に渡って精度が安定するのですが、進み遅れを調整できる時間の幅が緩急針方式にくらべて非常に少ないため、時計の部品や組立に高い精度や技術が求められます。 Durabalanceではそのバランスが図のb(円形のもの)にあたります。これをcの板上でスライドさせることでテンプの緩急を調整。原理は高機械に搭載されるフリースプリング緩急機構と同じですが、普及品レベルの製品で実用化した初めての調整機でしょう。 エルジンの自動巻ではCal.760/Cal.761にのみDurabalanceが搭載。同機構の搭載されたエルジンの文字盤にはそれをモチーフとしたマークが描かれています。 |