SEIKO GRAND SEIKO SPRING DRIVE

  

  

  

  

  

  

  

  

 2004年のバーゼル・フェアで発表された“自動巻”『スプリング・ドライブ』を搭載するグランドセイコー。スプリング・ドライブはセイコーが開発した新発想の時計機械システムです。1999年のバーゼル・ワールドフェアで“手巻き”のファーストモデルが発表されました。ゼンマイで駆動する(動力源にする)機械式時計ですが、脱進調整機の部分をIC制御しクオーツ時計レベルの精度を持たせています。IC制御を行うためには電力が必要ですが、電池を用いずにゼンマイのほどける力で発電も行いその電力としています。

 セイコーは『キネティック』(別名AGS/オートクオーツ)という自動巻・発電クオーツ時計を1988年に発表し、現在も製品展開を行っています。電池を使わずクオーツの精度を実現する点では求める結果が似ていますが、『キネティック』は電池を不要とした“クオーツ時計”であり、『スプリング・ドライブ』はクオーツの精度を得た“機械式時計”ととらえることができます。

 『スプリング・ドライブ』の魅力のひとつにスイープ運針があげられます。基本的にはゼンマイが動力源で、輪列を持った機械式時計ですので、秒針が(1秒ごとに動くステップ運針ではなく)スイープ運針することは想像できます。さらに『スプリング・ドライブ』ではICで制御するテンプ(にあたる部分)が(往復運動ではなく)一方向への回転を続けるので、機械式時計以上に流れるようなスイープ運針を得られるのです。

 流れるようなスイープ運針といえば1秒間に数百振動を行う音叉時計が有名ですが、“振動”という概念を持たない『スプリング・ドライブ』は完全なスイープ運針を実現しました。この優雅な運針は高振動の機械式時計のそれとも違う独特な趣きがあり、時計ファンならずとも文字盤上に流れる時の経過を愉しむことができます。

 スプリングドライブのゼンマイ巻上げに“自動巻”機構を持たせたのが、ここで紹介するグランドセイコー・スプリングドライブです。自動巻機構にはセイコー(諏訪精工舎)が1959年に開発したマジックレバーを採用。数々の改良を加え巻上効率を向上、パワーリザーブは驚異の72時間を実現(これまでの手巻スプリング・ドライブは48時間)しました。これは週末の2連休はもちろん、3日間時計を外していても時計が止まらないことを意味します。また8時位置に設けられたインジケーターがさらなる安心感を与えてくれます。1日10時間程度腕に着けていればインジケーターがフル表示から減ることはありません。

 「セイコースタイルを進化させた」と言われる同機のデザインは伝統あるセイコーの意匠。現行グランドセイコーの中でも特に大きな時計ですがケースサイドが裏蓋側にむかって逆テーパーとなる絶妙な設計により厚みや大きさをさほど感じさせない上品な仕上がりとなっています。

 何にも似ていない新発想、その機械がもたらす高い精度と趣味性、国産ウォッチの伝統デザイン、GSという歴史あるブランド。これらを合わせ持ったグランドセイコー・スプリングドライブは“趣味の時計”“実用の時計”としての魅力があふれる現行腕時計です。 2006.1 update

    

  

  

  

  

  

  

ローターにはブラシ掛けによる放射模様が見られます。GSでは初めての試み。

  

  

  

ガラスの上には薄くGSライオンのレーザー刻印が見られました。

  

  

  

  

 ヴィンテージ・ウォッチファンにはお馴染みの61GSとの機械比較。自動巻GSの傑作とも言われる61系を意識した“機械デザイン”のようにも思えます。ローターの形状や放射模様は名機61系へのオマージュでしょうか。
  

  

  

  

外箱と内箱の観察

GSの重要アイテムである外箱と内箱を紹介します