非常に早い時期のワンプッシュ・クロノグラフ。1940年代初頭のものと思われます。文字盤は透き通るような陶器(セト)文字盤でクラック(ひび)も見られません。ブレゲ数字とブレゲ針が相性よく重なり、朱色の外周表記も鮮やか。樽型ボタンを持ったクロノグラフケースは材質も含めていかにも年代モノ。搭載機械も経年のくすみは見られましたがノーダメージの状態でした。 搭載機械は見た事のない珍しいクロノグラフ・メカ。所有のクロノグラフ専門書を調べるとキャリバー・ナンバーも設定されない最初期のVENUS(解説)であることが判明しました。以下ではこの機械の動きを詳細に解説しています。 後年にCal.150やCal.175といった名クロノグラフ機械を生み出したVENUSの源流がここにあるのかもしれません。 2005.9 update |
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クロノグラフ針(文字盤中央から伸びる細長い針)が12時位置に静止している状態(帰零状態/リセット)です。各部品の名称は上記の通り。写真左下にプッシュボタンがあります。時計が動いている限り、ドライビングホイールは時計回りに回転。トランスミッションホイールはこれに噛み反時計回りに回転しています。クロノグラフランナーはクロノグラフ針と連動しており、この車を回転、停止させることでクロノグラフ(ストップウォッチ)が機能。 写真の帰零状態(リセット状態)は、リセットハンマーがクロノグラフランナーの下部に付属するハートカムを叩き、クロノグラフランナーが決められた位置に強制的に(瞬時に)回転した状態です。この“決められた位置”は時計上面から見ると、クロノグラフ針が12時位置に静止している状態にあたります。 この状態からプッシュボタンを押すと、連動した部品がピラーホイール下部のラチェット(黄色●)を上方向に押し、ピラーホイールを時計回りに回転させます。 リセットハンマーとトランスミッションホイールに連動する2つの★マークにあたる突起が、ピラーホイール上部の「山」と「谷」に乗り降りすることで3つの状態(1リセット/2スタート/3ストップ)を繰り返します。 |
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左下にあるプッシュボタンを押すと1で説明した通り、これと連動した部品が赤い矢印の方向にスライド。この先端がピラーホイール下部のラチェット(黄色●)を上方向に押し、ピラーホイールを時計回りに回転させます。 帰零状態ではリセットハンマーの根元にある突起(★)がピラーホイール上部の「谷」に降りていましたが、ここで「山」に乗ります。これに連動してリセットハンマーは(クロノグラフランナー下部に付属する)ハートカムから離れます。クロノグラフランナーのブレーキが解除された捉えて下さい。 同時にトランスミッションホイールに連なる部品の根元(★)がピラーホイール上部の「谷」に降りる(←)ことで写真のようにトランスミッションホイールとクロノグラフランナーが連結(←)。クロノグラフランナーが回転を始めます(文字盤側から見るとクロノグラフ針が始動します)。 |
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クロノグラフが作動している状態(2)から、プッシュボタンを押すとこれと連動した部品は(2のときと同じように)赤い矢印の方向にスライド。この先端がピラーホイール下部のラチェット(黄色●)を上方向に押し、ピラーホイールはさらに時計回りに回転します。 この状態でも(★)は(2のときと同様)ピラーホイール上部の「山」に乗ったままなので、リセットハンマーは動きません。一方、トランスミッションホイールに連なる部品の根元(★)はピラーホイール上部の「山」に乗る(→)ので、写真のようにトランスミッションホイールとクロノグラフランナーが離れます(→)。このことでクロノグラフランナーの回転がストップ(クロノグラフ針が停止)します。
この状態からプッシュボタンを押すと「1帰零状態(リセット)」の状態となります。リセットハンマーが(クロノグラフランナーの下部に付属する)ハートカムを叩くことでクロノグラフ針が帰零(リセット)するのです。 |