LEMANIA Cal.15TL

    

  

  

  

  

  

  

   

 LEMANIA(同社歴史)のクロノグラフ。極初期の腕時計クロノグラフ機械・Cal.15TLを搭載しています。文字盤にはLEMANIA銘は見られませんが、特徴的なケース/プッシャーと文字盤からオリジナルと推察しています。ほぼ未使用の状態でしたので、1940年代初め頃に作られた美しいクロノグラフ機械を観察することができました。

 同社はクロノグラフ製造の名門で、早い時期から同種機械を得意としていました。1932年にはOMEGAやTISSOTなどが設立したSSIHグループ(後にSMHグループと合流しスウォッチグループになる/歴史)に参加、これ以降はOMEGAやTISSOTのクロノグラフ機械についてもLEMANIAが手掛けています。OMEGAの代表的なクロノグラフであるスピードマスター(手巻きプロフェッショナル/例12)も同社が設計・製造した機械。徐々にクロノグラフ機械のエボーシュ(語句解説)の顔が強くなりますが、1970年代まで自社ブランドでの完成品も手掛けていました。1990年代からの機械式時計ブームではバシュロン・コンスタンチン等の超高級完成品メーカーのクロノグラフ機械を手掛けるなど、クオーツショック以降も「クロノグラフ機械を製造できるメーカー」として独自ポジションで現存しています。

 文字盤はテレメーターやタキメーターなどがビッシリとプリントされ、軍用時計の雰囲気。独特な形状のハンド(長針/短針)と、長く伸びたクロノグラフ針は文字盤表記が読み取りやすいようデザインされています。

 特筆すべきはクロノグラフの操作感。ストップウォッチ専門機を彷佛とさせる軽やかさとクイック感を持っています。プッシュボタンを押し込む深さと指が受ける抵抗も人間工学に基づき設計されたと思えるほどの絶妙さ。さらにリセットはバネのようなパワーとスピードを持って帰零。独特なプッシュボタン形状も相まって最高の操作感を持っています。

 ここで紹介するCal.15TLは、ほとんどがLEMANIA銘の完成品に搭載されましたが、過酷な環境下で絶対的な耐久性が求められる軍用時計に数多く採用されました。同社製クロノグラフの礎となった機械です。機能優先に設計された機械に工芸品の優雅さはありませんが、美しい梨地の地盤に金メッキが施された機械は非常に見応えがあります。 2006.7 update

  

    

  

     

  

  

   

  

  

  

    

  

  

  

  

    

  

  

LEMANIA Cal.15TL

OMEGA Cal.33.3

  

 希少なOMEGA Cal.33.3(あきサン所蔵)との比較。Cal.15TLはムーブメント径のリニュー・サイズを表し、Cal.33.3はミリ・サイズを表しています。1Ligne(リニュー)=2.256mmで計算すると若干の誤差はありますが、Cal.15TLは直径33.3ミリの記録がありますのでムーブメント径は全く同じ。

 OMEGA Cal.33.3はOMEGAの機械と記録されてきましたが、LEMANIAが設計・製造した機械に間違いありません。15TLと部品形状を比較すると、これを合理化・発展させた機械のように見受けられます。