1960年に製造が開始された初代セイコーマチックです。製造は諏訪精工舎(諏訪精工舎についてはこちらで解説)。当時、17石、20石、30石モデルが発売されましたが、ここで紹介するのは30石モデル。金メッキされた機械を搭載する高級時計です。初代セイコーマチックは1963年まで製造が続けられました。 薄型の自動巻時計を実現するために手巻機構を省略。諏訪精工舎の初代自動巻時計である「ジャイロマーベル」で初採用されたマジックレバー方式(解説)についてもツメ部分の形状を改良しスリップを防止、巻上効率をあげています。「ジャイロマーベル」の機械厚みが6.5ミリであるのに対して「初代セイコーマチック」は4.7ミリとなっています。埋め込まれた4時位置の竜頭は時間合わせにのみ使用。 この初代セイコーマチック登場以降、マチックシリーズは数々の改良を重ねながら10年近くにわたりロングセラーを続けます。62系と総称されるマチックシリーズの原点がここにあるのかもしれません。 ケースは薄型、シンプル。当時の流行でしょうか。一方で長いバーインデックスとドルフィンハンドはなかなかの“押し出し感”です。 参考:国産腕時計5「セイコー自動巻」(トンボ出版) 2002.5 update |
|
|
|
|
|
|
|
|
Cal.630 初代セイコーマチックに搭載された機械。同時に17石と20石の機械を搭載したモデルもリリースされていますが30石機械のみ金メッキされたようです。ローターに穴が開いていないのはCal.603のみ。 Cal.395 固体番号も刻印される高級機。ベアリングにはルビーボールを使用。日付機能がつく(曜日はつかない)機械は他にCal.394/24石がありますがこちらは機械に金メッキされていません。ケースの仕上げも含めて石数で差別化をはかったのでしょう。 Cal.400 曜日表示が付くセイコーマチックの初代。Cal.6206との住みわけはハッキリしませんが1963年当時、Cal.6206搭載機が12500円だったのに対しCal.400搭載機は15000円と上位機種であったことは間違いありません。 Cal.6206 石数は26。1963年にリリースされましたが翌年には微動緩急装置、秒針規制装置を搭載した後継機Cal.6218/35石がリリース。こちらは黄金メッキがされていません。 |
|
ドイツの時計メーカ−「KIENZLE」はSuperiamaticという時計にこの603を搭載されました。その機械にはまんま603の刻印まで残っています。(参考写真) |
|
|
1960年前後のセイコー製時計の文字盤に上記のようなマークを見ることがあります。これは文字盤に植字されている時字の材質を示しています。SDの時字は18Kもしくは14K(白系の文字盤にはホワイト−ゴールド)を使用。ADの時字は真鍮字金に硬質金メッキ(白系の文字盤にはロジウムメッキ)が施されているようです。他にも初期の時計にはED(Extra Dial)という簡易な金メッキ仕様がありましたが品質が低くADに移行したようです。 時字には植字以外に浮時(文字盤の裏側から文字を押し出し浮かせて見せるもの)や印字などがあります。 参考:国産腕時計7「セイコーマーベル」(トンボ出版) |