45系機械を搭載したキングセイコーです。45系は1968年に製造が開始された10振動の手巻機械。この時計には同系初号機のCal.4500Aが搭載されています。設計、製造は第二精工舎亀戸工場(亀戸の解説はこちら)。クオーツ登場前夜に製造が開始されたため、セイコーの手巻機械としては最晩期のもの。当然、同社製で最も完成された手巻機械でもあります。 国内においては、60年代前半より国産メーカーの自動巻時計が広く普及し、60年代後半になると値段の下がった自動巻時計が市場を席巻する勢いでした。一方で手巻時計への需要も高かったようで、キングセイコーのような高級ライン向けの機械開発も行われていました。 45系機械はクロノメーターコンクール参加のために、第二精工舎亀戸工場が開発したCal.045/16振動を市販用にモディファイしたものです。Cal.045は1967年の同コンクールにおいて、スイスの一流メーカーがしのぎを削る中、2位を獲得(Cal.045/16振動の解説はこちら)しました。 この45系の生い立ちからも、同系機械は精度を追求することに大いなるポテンシャルを持っていました。1968年に設立された「日本クロノメーター検定協会」の公式検定を初めてパスしたのもこの45系機械です(同機械はキングセイコー・クロノメーターに搭載)。またクロノメーターよりも厳格な規格である、セイコー独自の「GS規格」もクリアし、同社「グランドセイコー」ブランドの腕時計にも搭載されました。さらには1968年に公式クロノメーターにおいて特別な意味を持つ「ニューシャテル天文台」における検定をパス、また1969年に1年だけ開催された「市販品を対象としたニューシャテル天文台クロノメーター・コンクール」にもエントリー。同コンクールの検定をパスした実機械は、セイコーの超高級品(天文台クロノメーターCal4520A/45グランドセイコーV.F.A Cal.4580)にケーシングされ市販されています(クロノメーター規格/コンクールについての詳細はこちら)。 45系機械は12型という大型機械で、何とも威風堂々としています。直線を基調とした時計機械は舶来メーカーにはない和的な雰囲気。凛とした“整然さ”は国産時計機械の真骨頂。工芸品ではなく工業製品としてスタートした国産時計機械の美しさがここに極まっています。 “真面目な”外装デザインの多かった45系キングセイコーの中で、このキングセイコーは唯一、カラー文字盤を採用。光沢のある灰色の意匠です。ケースデザインもラグが一体となった大胆な造形。一方で高級品らしく、ケースの面構成と仕上げは複雑で精巧。文字盤からケースサイドにつながる曲面は丁寧にポリッシュされ、そこからケースサイドに向けてヘアライン仕上げとポリッシュ面が交互に繰り返します。外装、搭載機械とも大変魅力的な腕時計です。 2004.4 update |
裏蓋外側にもあった45-8000の刻印。45はキャリバーナンバー、8は文字盤の外系末尾(28ミリ)。000はモデルチェンジ推移で、カレンダーなしのこの時計は同ケースにおいては初号機(000)となります。カレンダーが付加されると010、曜日付カレンダーで020という具合に推移。文字盤下部にも同じ数字が見られますが、若干の誤差があることが多く必ずしも合致しません。 |
テンプの両持ちブリッジは「クロノス」から続く亀戸製手巻機械の伝統です。微動緩急装置は歯車調整式。「アオリ調整レ−バー」が新しく採用され、ヒゲ受とヒゲ棒の隙間をレバーを動かすことでテンプの等時性を調整する仕組みになっています。 参考/国産腕時計9・トンボ出版 |
時計師kuroさんから亀戸45系機械について貴重な情報を頂きました。
この時計には秒針規正装置がついてます。輪列受けの下には画像ような部品が使われているはず。
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