GRUEN POWER-DATE Cal.666 / FHF Fontomatic Cal.65-4

  

  

  

  

  

  

  

 GRUEN(同社歴史)の「POWER-DATE」です。1960年頃の自動巻ですが、エボーシュであるFHF製の機械を搭載。GRUENは自動巻においても積極的に自社製機械を開発し、1960年時点でもその製造は続いていました。ここで紹介する「POWER-DATE」は同社が1960年代に展開した自動巻シリーズ「POWER-GLIDE」(下で当時広告紹介)のデイト仕様です。しかし「POWER-GLIDE」シリーズのほとんどが自社製機械Cal.560(後継710系)を搭載しているのですが、この「POWER-DATE」には何故かFHF製Cal.65系(GRUEN名ではGRUEN Cal.666)の機械が載っていました。「POWER-GLIDE」のデイトモデルには自社Cal.560系のデイト付機械であるCal.560CAを搭載するものもありましたので、同時期に外部エボーシュの機械を使った理由は不明です。

 さらにこのFHF製Cal.65系を採用したメーカーは少なく、現存する機械をみることはほとんどありません。所有の自動巻研究本によると「大きなローター回転音と修理が難しい構造」が不評で採用する時計メーカーがほとんどなかったとのことです。一方、この機械を“参考”に製造されたとされるのが日本のシチズン/03系。03系は初号機が1961年にリリースされました。シチズンが本格的に自動巻製品を展開し始めるにあたり“開発”された機械です。FHF製Cal.65系は1959年に開発された機械ですが、製造数の少なさから時計機械愛好者の中でもその存在を知る者は少なく、シチズン/03系との関わりを語られることはほとんどありませんでした。下ではFHF製Cal.65系とシチズン/03系を比較し、酷似具合を検証しています。

 さて今回紹介する固体に話を戻しましょう。ラグ部分が独特なラウンドケースです。ケースの上・下部にボリュームを持たせ、ベルトとの接点を直線にデザインしているあたりは60年代風デザイン。インデックスから中央に伸びる蛍光塗料も50年代にはない“新感覚”の模様となっています。これらは「POWER-GLIDE」シリーズの共通デザインのようです。

(FHFの歴史) FHFはThe Fabrique d' Horlogerie de Fontainemelonの略。1793年にスイス・ヌーシャテル州のフォンテンメロンに設立されました。エボーシュでは最古のメーカーです(エボーシュの解説)。I.BengeralとS.Bengeral、J.Humbert-DrozとF.Humbert-Drozの二組の兄弟が創設。時計機械の製造にいち早く自動工作機械を持ち込んだことで生産性を大きく向上させます。1913年の最盛期には1000名以上の従業員を抱え、年間のムーブメント(時計機械)製造個数は100万個を越えていました。1926年、同じくエボーシュのAS(解説)やA.Michel(後年Felsaが吸収)などとエボーシュの連合組織(組合)であるEbauches S.Aを創設。初期メンバーとなります。Ebauches S.Aの下で時計機械の製造を続けたFHFですが1989年に操業を停止。 2005.8 update

    

    

  

  

GRUEN WATCHのG・Wをデザインしたマーク

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

GRUEN Cal.666/FHF Cal.65-4 18000振動 5振動/秒

大きなローター回転音と修理が難しい構造からCal.65の評価は低かったようです

参考/AUTOMATIC WRISTWATCHES From Switzerland Heinz Hampel 

  

  

  

  

  

  

  

PAT(特許)取得も行っています

  

  

  

ボールベアリングを採用

  

  

  

  

ローターの左右回転が一方向に整流される仕組み

  

ローターが時計回りの場合

ローター内側の歯とかんだ遊動車(2)が右にスライド、図のような輪列となる。

  

  

ローターが反時計回りの場合

ローター内側の歯とかんだ遊動車(2)が左にスライド、(4)を経由して図のような輪列となる。

  

  

  

  

FHF Fontomatic Cal.65系 と シチズン Cal.03系との比較

 部品の造形や配置に僅かな違いはありますが、構造は同じであることが分かります。1959年に開発されたFHFのCal.65系は短命に終わりました。一方、シチズンの03系はリリースされた1961年から1964年頃までシチズンの主力自動巻機械として、普及品から高級品まで数多くの製品に搭載されてきました。1965年に同社の次世代・自動巻機械シチズン52系がリリースされて以降はこの方式を採用していません。なお、整流方式は異なりますが他に外周ローターを採用する機械にLONGINES Cal.340系(1962年〜)があります。

  

  

  

  

POWER-GLIDEの広告 右下の機械は自社製Cal.560

外装はここで紹介した固体とほとんど同じです。