ETERNA Cal.1247T

  

  

  

    

 ETERNA/エテルナ(歴史)の全回転ローター自動巻「ETERNA MATIC」の最初期モデルです。エテルナはバンパー式(半回転式/)自動巻を1941年にリリース。自動巻の主流が全回転ローター式へと移る中、1948年、先ずは女性用(腕時計)自動巻機械として「ETERNA MATIC」の第一号機、Cal.1198(9.25lignes/20.5mm)を世に送り出しました。男性用(腕時計)自動巻機械の「ETERNA MATIC」初号機は1950年に発表されたCal.1248T(11.5lignes/25.6mm)。ここで紹介するCal.1247T(12.5lignes/27.6mm)はこれとほぼ同時期のものです。以上の開発経過を見ると分かるのですが、「ETERNA MATIC」は小型腕時計用の自動巻機械としてスタートしました。これは「ETERNA MATIC」の特質(機構)と関係があります。

 「ETERNA MATIC」はローターの回転効率を上げるためローター部に初めて「ボールベアリング」を採用。特に比重の関係からローターの回転効率が悪い小型ムーブメントにおいて大きな効果を発揮したのです。当然、標準サイズのムーブメントにおいてもその効果は同様。現在ではほとんどの時計メーカーが同技術を採用するに至っています。現在の同社ブランドマーク「ファイブ・ボール」はこの「ボールベアリング」をイメージしたもの。

 また「ETERNA MATIC」の特長として優れた整流・巻上機構が上げられます。自動巻(整流/両方向巻上)機構には現在でも様々な方式が混在していますが、大きく「切替え伝え車方式()」「ツメ巻上げ方式()」「遊動車方式(例)」に分けられます。「ETERNA MATIC」は「切替え伝え車方式」のひとつ。特筆すべきはその構造を大幅に小型(ユニット)化したことです。理論的には「切替え伝え車方式」は伝達ロスが少なく効率の高い整流方式と考えられることから、その優れた整流機構をここまで小型化できたことは自動巻機械史における大きなブレーク・スルーでした。エテルナから分社化したエボーシュのETA社(歴史)はこの「小型・整流ユニット」と「ボールベアリング機構」を搭載した廉価な自動巻機械を大量に製造、供給し、瞬く間にエボーシュ自動巻機械のマーケットを席巻。現在、多くの時計メーカーが採用する現行・ETA社製自動巻機械が、今回紹介するエテルナ製機械とほとんど構造が変わらないことを考えると、いかにエテルナの技術が優れていたかを理解できます。

 ここからはコアな時計ファンの興味ですが、このCal.1247Tには最初期の「ETERNA MATIC」にのみ見られる「イカリ型・金色ローター」が搭載されています。製造個数が少ないようでヴィンテージ市場でもほとんど見ることがありません。非常に美しい機械は以下で紹介していますのでご覧ください。

 外装に目を移しましょう。色気のない軍用時計のような文字盤です。アラビア数字のインデックスとハンドには夜光塗料を塗布。秒針の先端は赤く塗られ視認性を高めています。半世紀以上も昔の時計ですが大事に保管されてきたのでしょう。外装、機械とも奇跡的な状態の良さです。 2005.8 update

    

 

    

  

  

  

   

  

  

  

  

ETERNA Cal.1247T 18000振動 5振動/秒