REVUE ROTOR-KING Cal.87

  

  

  

  

 REVUEのRotor-Kingです。同社が1958年に開発した自動巻機械Cal.87を搭載。自動巻の技術が急速に進歩した50年代後半になり開発された機械でしたが、その独特な構造を見ると試行錯誤の上、完成した機械だと推察されます。Cal.87はREVUEが独自に開発した唯一の全回転ローター自動巻。製造された数も僅かだったようです。その後、REVUEは複数の時計メーカーと連合企業体MSRを組織(歴史)し、この企業体のもとで新世代の自動巻機械を開発しました。Roter-King/Cal.87は現存数も少なく、非常に珍しい機械ですので以下で構造を詳しく検証しております。

 外装に目を移しましょう。オーソドックスなラウンドケースですが、文字盤のREVUEマークは手の込んだ彫文字。彫文字はセイコー初の高級腕時計・初代ロードマーベルなどに見られますが、これもまた腕時計では珍しい作業。早い時期の自動巻であることを考えると、この時計は当時の高級品であったと想像できます。 2005.5 update

    

  

  

  

REVUEのトレードマークは彫文字となっています。

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

REVUE Cal.87 18000振動 5振動/秒 50時間リザーブ 

珍しい緩急装置です。円盤のような調整機を回転させて+−を調整。

  

  

  

  

  

  

  

  

  

テン輪の下に何かのマークが確認できます。

  

追記 十号さんより次のご指摘を頂きました。

「テンワの下のマークは「GT」の文字をデザインしたもののように見えます。そうすると、創立者のGideon Thommenのイニシャルではないでしょうか」

   

お見事です! たぶん間違いないでしょう。

  

  

 独特なツメ巻上機械の構造を確認するためローターを外します。写真の2ケ所のネジを外せば自動巻ユニットが離脱。

  

  

  

  

  

伝え車は赤丸の箇所に入ります。

  

  

  

 ローターと自動巻機構を裏から見たところ。ローターの中心に丸い部品が取り付けられていますが、ローター中心の穴が(この部品には)偏心となるよう位置しています。このためローターが回転すると、ローターと一体のこの部品が金色の部品を前後左右に動かし、これに連動して2つのツメが写真下の伝え車を回転させます。車左の長いツメは車を引き、右の短いツメは車を押します。2つのツメは針金のような部品で連結。特種な設計によってツメが交互に動くようになっています。

  

  

  

  

    

IWC ペラトン式

 「ツメ巻上方式」は自動巻機械の巻上構造において最も古い発想です。初期のバンパー自動巻はほとんどがこの方式を採用していました()。全回転(ローター)の時代になると、整流(ローターの左右回転運動を一方向回転運動に変換しゼンマイを巻き上げること)のために新たな仕組みが考案されます。特定の歯車がスライドする「遊動車式」(例/1.2.3)や、上下に特殊な構造を持つ一つの車(切替伝車)で整流を行う「切替伝車式」(★解説(その他の例/1.2.3.)などです。現在では「切替伝車式」が主流。

 今回紹介しているREVUEのように全回転ローターでありながら「ツメ巻上方式」を使う自動巻機械は、初期の全回転ローター自動巻に見られました(例/1.2)。しかし多くは早い時期に姿を消してしまいます。

 ひと言に「ツメ巻上方式」といっても、ローター回転から歯車までの動力伝達方法(設計)は色々です。この方式を取りながら、70年代まで長期に渡り製造が続けられ機械にIWCの「ペラトン式」があります。REVUEのROTER-KINGと基本的な発想は一緒ですが、考えを尽くした設計や細かな工夫により、巻上効率、耐久性、精度などは格段に高くなっていると考えられます。代表的な「ツメ巻上方式」機械です(解説はこちら

  

  

セイコー マジックレバー

 セイコーのマジックレバーも「ツメ巻上方式」のひとつ。マジックレバーは多くのスイス製「ツメ巻上方式」を参考に完成したものと想像しますが、全ての「ツメ巻上方式」の中で最も合理的な構造のように思います。部品点数が少なく、この恩恵により(クロノグラフ/例1/や、後述の自動巻スプリングドライブなど)特殊機能を持った時計への組込みも容易。巻上げ効率も高くなっています。

 写真(機械解説)では分かりにくいかもしれませんが、ローターの中心軸から僅かにずれた位置(偏心した位置)にV字型のマジックレバーの根元が取り付けられています。ローターを“ひき臼”に例えると、“ひき臼”の取っ手部分に取り付けられているとイメージして下さい。

 ローターが回転すると(ひき臼を持つ両腕の動きのように)マジックレバーが前後左右にスライド移動します。レバー先端の左右のツメはそれぞれ引きツメ、送りツメとなっており、ローターの左右回転ごとに役割を変えて、写真上部の伝え車を一方向だけに回転させます。また伝え車はラチェット(歯の部分が傾斜している)になっており、ツメのかかりを可能としています。 ラチェットはペラトン式の伝え車(写真上)でも確認できます

 1959年に初号機が開発されたマジックレバーですが、現在でも、廉価なセイコーファイブから、同社最高級ラインであるグランドセイコー・スプリングドライブにまで、幅広く採用されています。現在、自動巻の主流になっている「切替伝車式」にも勝るとも劣らない「ツメ巻上方式」だと言えそうです。

  

  

  

  

  

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