ORIENT GRAND PRIX 64 ALMIGHTY/LCW64 Cal.676

  

  

  

  

  

  

  

 オリエントのグランプリ64・オールマイティー/スイマーです。リファレンスはLCW64。グランプリ64は初号機が1963年に発売されたシリーズで、ここで紹介するスイマーは1965年8月に登場した“超完全防水型-10気圧耐圧”(当時の同社表現)モデル。当時の値段は15000円です。

 「グランプリ」銘はオリエントの“最高級シンボル”。グランプリ「64」は1964年の東京オリンピックを記念し「64」石としたことはあまり知られていません。東京オリンピックの公式時計をセイコーが担うことは1962年頃にほぼ決定しており、セイコーは一般向けにも「聖火マーク」の入ったクロノグラフやワールドタイム腕時計をリリース。東京オリンピックの「公式商品」を数多く販売しました。そんな中でオリエントもさりげなく“64年を意識した”腕時計を発売していたのです。コソコソした感じも受けますが、それでも、日本における戦後初の世界的ビックイベントを“記念する”時計を発売する意地、それを相応な超高級品とした気概に、同社のパワーを感じます。

 グランプリ64の機械はオリエントが1961年に発売した初の自動巻「スーパーオート」の機械構造を踏襲しています。珍しい巻き上げ方式で、その機構はIWCのペラトン式に酷似(下で解説)。

 1960年前後、国産時計メーカー各社は自動巻腕時計の初号機を続々と発表し、若干の紆余曲折を経て、その後、主力とする自動巻機構が決定していきました。面白いのは当時、スイス製腕時計で一般的になりつつあった切換車を使う単純な自動巻機械を使う国産メーカーがなかったことです。セイコー(諏訪精工舎)は「マジックレバー方式」、シチズンは「外周ローター式」、そしてオリエントは「IWCのペラトン式」に似た自動巻機械を主力機械として採用。60年代前半の自動巻全盛期(初期)には、各社これらの機械を新製品に組込み、リリースしていきました。

 グランプリ64を紹介するにあたって特筆すべきは、やはりその多石機械です。30石の自動巻機械をベースに、装飾として34の石が付加され、計64石となっています。石で装飾された時計機械は独創的な美しさで、これはグランプリ100AAA35石にも見られました。同社“オリジナル”の美的センスであったことは間違いありません。オリエントの64石、100石に対して“意味のない”多石競争の副産物のように言われる節もありますが、石の装飾を見れば素直に美しいと感じられます。当時の時計マーケットには“多石信仰”とも言われる迷信めいた価値基準がありました。オリエントはこれに応えるべく100石時計を作ったのです。それに応えるための多石化だったとしても、それを奇異だとか無用で片付けるのはあまりに寂しすぎます。石を装飾に使うという発想と大胆にも具現したオリエントの一種“突き抜け感”は、同社のアイデンティティの一つでしょう。照明付腕時計や三角型時計、万年カレンダーなどの名腕時計を生み出した、同社の創造性であり商品開発力とも言えそうです。64石機械は下に写真をアップしておりますのでジックリとご鑑賞下さい。

 さて外装もまたこの時計の魅力のひとつです。防水ケースは非常に大きく、太いラグや1.5ミリの専用風防などとも相まって相当マッシブな雰囲気。一方で「グランプリ100」の登場までは同社の最高級品であったことから、文字盤の質感、ハンド(針)やインデックスの造形など徹底的に作り込まれています。特に光を鈍く反射する銀色の文字盤は格別の仕上がり。超極細のヘアライン処理が施され、品ある雰囲気となっています。竜頭やベルトなどにもロゴが入るなど、国産ヴィンテージでは希有な「高級スポーツウォッチ」と言えるかもしれません。 2004.4 update

    

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

「12角ネジ蓋式」で締め込みも相当です。裏蓋開けには“オフィシャル”な協力を頂いています。

  

     

保護シールが僅かに残っています

  

  

  

 なお、この時計の風防は圧入で装着しているようで、裏蓋の開閉時にケース内の気密が変わり、風防の動きで周りのベゼル(細いリングのような部分)が取れてしまうことがあります。

  

  

ベゼルの取れている固体(参考写真)

  

  

  

  

  

ORIENT Cal.676 18000振動 5振動/秒 64石

これほどに美しい機械ですが、当時は一般人が時計機械を見ることなどありませんでした。

  

  

  

  

  

  

  

  

  

 切換車などを介さない方法で巻き上げるため、巻き上げ音は非常に静かです。ローター真下のカムに接触するローラーが金属ではなくルビー(ピンク色の石)を使っていることもこれに寄与しているのかもしれません。

   

  

  

  

同社の微動緩急調整装置であるTRIOSTAT/トリオスタット(こちらで解説)

  

  

  

 IWCのペラトン式との比較。ペラトン式は同社のアルバート・ペラトンが1950年代に開発した自動巻機構です。

  

  

 酷似というよりも同じ機械といったほうが適当なようです。巻き上げの仕組みについてはこちらで解説。

  

  

  

  

 裏蓋のメダルにはギリシャ神話に登場する海の怪物ヒッポカンプ/Hippocamp(シーホースともいう)が刻印されています。オメガでも防水時計の象徴などとして歴代スポーツウォッチの裏蓋に刻印されてきました。ヒッポカンプは馬の上半身と魚の下半身をもっています。たてがみはヒレになっており、二本の前脚には水掻き。同神話に登場するポセイドンが飼っている馬で、海中では彼の馬車を引いています。

   

    

  

  

   

   

  

  

  

  

  

 

     

    

  

 

  

  

  

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