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ハミルトンの自動巻時計です。ネットオークションを通じてアメリカの方から譲って頂きました。ケースは10K金無垢。1950年代終わり頃の時計ですが素晴らしい状態を保っています。機械はマイクロ・ローターの自動巻。Buren/Cal.1000Aを搭載しています。ビューレン自身のブランドでは「Super-Sulender」という製品にCal.1000系の機械を搭載しました。一方で早い時期からハミルトンにCal.1000系の機械を提供。むしろハミルトンのほうが同系の機械を搭載した時計を積極的にリリースしています。またCal.1000系の後継機械であるCal.1280系もハミルトンに提供され「Thin-o-matic」という製品名が付けれました。 Cal.1000系にはサイズや日付表示の有無などで1000〜1008がありますが構造はほとんど変わりません。 マイクロ・ローターはローターユニットを時計の基幹ユニットに被せることなく配置できるので自動巻時計でありながら薄型化が容易です。1950年代の終わりから1960年代の初頭にかけ自動巻時計の薄型化は各メーカーの課題でした。日本メーカーのセイコーは手巻機構を省略することで薄型化をはかり、シチズンは外周式ローターを採用するなどしています。 |
マイクロ・ローターはユニバーサル(1/2)が有名ですが同社が初号機を発表したのは1958年、ビューレンは1年早い1957年との記録があります。さらにビューレンがマイクロ・ローターの特許を取得したのは1954年。一方でユニバーサルの機械にはPATナンバーが刻印。特許の具体的な内容は分かりませんが構造に若干の違いがあったのでしょうか。 話をハミルトンに移します。同社は1892年アメリカのペンシルバニア州ランカスターにて設立された時計メーカー。設立当初より鉄道時計を得意とし1960年代まで多くの鉄道時計を製造しました。1950年代には電子テンプの時計(例)を開発。1954年にアメリカで、1955年にはイギリスで早々と特許を取得しています。「エレクトリック」「ベンチュラ」などのモデルが有名。1969年に発表された世界初の自動巻クロノグラフ「クロノマチック」の開発にも参加。クロノマチックはHeuer/ Breitling/ Buren/Hamilton/ Dubois Deprazの共同開発と言われますが、開発途中の1966年にハミルトンがビューレンを買収しています。さらにLED表示の時計もいち早く手掛けました。1971年に「パルサー」を発表。ただしハミルトンは、同時期にオメガを中心としたスイス資本SSIH(現在のスウォッチグループ)に買収されてしまいます。 2002.6 update |
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マイクロ・ローターの2大ブランド「ビューレン」と「ユニバーサル」。上の両機がそれぞれの初号機です。Buren/Cal.1000系は1957年に製造開始、Universal/Cal.215系は1年遅れの1958年と記録があります。ビューレンがマイクロ・ローターの特許を取得したのは1954年6月。一方で後発であるUniversal/Cal.215のローターの下にはPATナンバーが刻印。共に両方向巻上式でマイクローローター下で行う整流方法も酷似していますが微妙な構造の違いがあるのかもしれません。もしくは特許の権利関係が曖昧だった可能性も。後に「ビューレン」と「ユニバーサル」はもう一段薄型のマイクロ・ローター機械(1/2)を発表します。 マイクローローターとして知られる機構ですが、ビューレンは『mini-rotor(ミニローター)』と呼び、ユニバーサルは『micror(マイクローター)』と呼びました。他にPIAGETが同方式の自動巻を開発しています。 2006.4 追記 ユニバーサル社はビューレン社の持つ特許使用料として、ムーブメント1個につき4スイスフランを支払いマイクロ・ローターの製造を行っていました。ビューレン社は同特許の使用料として1971年までに約100万スイスフランを取得したとのこと。1972年には特許権が期限切れとなり、以降、パテックフィリップなどがマイクロ・ローター機械の製造に着手しています。 (参考)「クロノス日本版2006.5 第四号」135P センターローターVSマイクロローター〜パワーと美観の選択肢〜より |